田んぼや小川にいる野生メダカは黒い色をしていますが、ペットショップではオレンジ色のメダカをよく目にします。これは「ヒメダカ」と呼ばれる突然変異体で、日本では数百年も前からペットとして飼われていて、江戸時代の図鑑にも描かれています。ヒメダカの皮膚は、野生メダカのように黒い色素(メラニン)を合成できないため、オレンジ色になっています。 なぜヒメダカの皮膚ではメラニンが合成できないのかを調べた結果、この原因となっている遺伝子の正体を突き止めました。この遺伝子は12個の細胞膜貫通領域を持つ輸送タンパク質をコードしていると考えられ、その詳細な機能はまだ不明ですが、その後の研究で、マウス・ヒトのB相同遺伝子は、それぞれunderwhite・oculocutaneous
albinism type
4という突然変異体・遺伝病の原因遺伝子であることがわかり、人間やネズミでも同じくメラニン合成に係わっていることがわかりました。このタンパク質の解析が進めば、シミ・アザの治療や、美白化粧品などへの応用が可能になるかもしれません。ヒメダカがいたおかげで、新しい発見ができました。数百年もの間、大事に育て続けてくれたご先祖様たちに感謝です。
Fukamachi, S., A. Shimada, and Shima A
(2001) Mutations in the gene encoding B, a novel transporter protein,
reduce melanin content in medaka. Nature Genetics
28:381-385.